痛みは脳で感じています
患者さんが来院される最大の理由は身体のどこかしらに痛みを感じ、
何か不自由なことが起こるために来院されます。
実は、その痛みというのは脳で認識されているのです。
皮膚には、痛覚、触覚、圧覚、温覚、冷覚の5つの感覚を感じるセンサーがあります。
体内や外界から、痛みの刺激となる機械刺激(指を切ったり机をぶつけたりした時に感じる刺激)、温度刺激(熱い、冷たいなどの刺激)、科学刺激(科学的な物質などで炎症が起こる刺激)を各センサーで受け取って、電気的な信号(痛み情報)に変換します。
各センサーで感知した痛み(痛み情報)は、感覚神経を通って最終的に脳に伝わります。
脳にたどり着いた痛み情報は、大脳皮質の一部である一次体性感覚野というところへ届けられます。
一次体性感覚野は、痛みの処理に関わるところです。帯状に広がる一次体性感覚野の中でも場所によって体のどの部分の痛みを担当するかが分かれています。
それ以外にも痛み情報は、大脳辺縁系と呼ばれるエリアや、人の思考や意思決定に関わる前頭前野というところにも届けられます。大脳辺縁系は、記憶や感情をつかさどるエリアです。
一次性感覚野が痛みの強さや強度といった感覚的な痛みの情報に関与するのに対して、大脳辺縁系は不安や恐怖など心理的な痛みの情報を受け持ちます。
このように、情報を受け取る部分が違うことにより、痛みは感覚的なことだけでなく、心理的な部分が加わり痛みとして感じます。
また、痛みが生じると、自律神経の交感神経が優位になって、呼吸数・心拍数の増加、発汗作用、血圧上昇、筋肉の緊張など緊急反応が起こります。
すると、血流が悪くなり、血液を通して届けられるはずの酸素や栄養が組織に行き渡らなくなり、疲労物質も溜まり、組織が酸欠状態になります。
その結果、痛みを生み出す発痛物質が放出され、痛みが増強されてしまいます。
その痛みによって、再び交感神経の興奮が起こり、同じ現象を繰り返すこととなります
こうした負のスパイラルを痛みの悪循環といいます。
痛みの悪循環に陥ると、痛みを引き起こした元々の原因がなくなっても、いつまでも痛みが残ってしまいます。
さらに、痛みによるストレスや不安などの心理的要因が加わると、痛みが慢性化していく傾向にあります。
痛みが評価の対象ではない
来院されるほとんどの方の要望を伺うと「この痛みを何とかしてほしい」と言われます。
勿論、その辛い痛みを取り除いてあげたいと強く思います
しかし、痛みは本人だけにしかわからないことなので、痛みだけを身体を評価する指標にするには適さないのです。(勿論、参考にはします)
そこで身体の動き(可動性、柔軟性)、筋力、姿勢(歪みやバランス)などを評価の指標として患者さんと術者がお互いで共有し治療していきます。
治療により、この指標が改善されてくると結果的に痛みやしびれも段々と改善していきます。
痛みの改善の流れは、痛みが100がいきなり0になるというよりも、
段々と軽減していき、痛みを気にすることがなくなるいうように改善していきます。
まとめ
痛みの役割は痛みを感じることで、身体に警告を促して、
体の使い方に注意を向けるなど身体を守るためにあります。
痛み=感覚的な痛み+心理的要因
また、傷みを感じると交感神経の働きにより痛みの悪循環に陥ることがあるので
傷が浅いうちに早めの治療をお勧めしています。
当院の治療では筋の緊張を緩めるなど体の動きを改善し痛みの悪循環を防止します。
また、脳へ刺激を送ることで感覚的な痛みの閾値を高めて、痛みを感じにくくし、
不安を取り除くように心理的なケアも行っています。
これにより、症状改善に導いていきます。
監修 柔道整復師 小國良成