痛みは脳で感じている

患者さんが来院される最大の理由は身体のどこかしらに痛みを感じ、

何か不自由なことが起こるために来院されます。

実は、その痛みというのは脳で認識されているのです。

痛みを感じる3つのしくみ

①感覚的な痛み

皮膚には、痛覚、触覚、圧覚、温覚、冷覚の5つの感覚を感じるセンサーがあります。

体内や外界から、痛みの刺激となる

機械刺激(指を切ったり机をぶつけたりした時に感じる刺激)

温度刺激(熱い、冷たいなどの刺激)

科学刺激(科学的な物質などで炎症が起こる刺激)

を各センサーで受け取って、電気的な信号(痛み情報)に変換します。

各センサーで感知した痛み(痛み情報)は、感覚神経を通って最終的に脳に伝わります。

脳にたどり着いた痛み情報は、大脳皮質の一部である一次体性感覚野というところへ届けられます。

一次体性感覚野は、痛みの処理に関わるところです。

体のどの部分の痛みか?

痛みの強さは?

痛みの種類は?

といった感覚的な痛みの情報に関与します。

②心理的な痛み

痛みの情報は大脳辺縁系と呼ばれるエリアや、人の思考や意思決定に関わる前頭前野というところにも届けられます。

大脳辺縁系は、記憶や感情をつかさどるエリアです。

大脳辺縁系は不安や恐怖など心理的(感情的)な痛みの情報を受け持ちます。

痛めた記憶や、痛くなりそうな不安、ネガティブな感情が痛みを起こしたり、増幅させたりします。

ストレスで胃が痛くなったり、仕事に行こうとすると体が重だるいとか…

そいう経験はされたことがあるのではないですか?

③自律神経による痛みの増強

自律神経自体が痛みを感じるわけではないですが

痛みが生じると、自律神経の交感神経が優位になって、

呼吸数・心拍数の増加、発汗作用、血圧上昇、筋肉の緊張など緊急反応が起こります。

すると、

筋肉は緊張し血流が悪くなり、

血液を通して届けられるはずの酸素や栄養が組織に行き渡らなくなり、

疲労物質も溜まり

組織が酸欠状態になります。

その結果、痛みを生み出す発痛物質が放出され、痛みが増強されてしまいます。

その痛みによって、再び交感神経の興奮が起こり、同じ現象を繰り返すこととなります

こうした負のスパイラルを痛みの悪循環といいます。

痛みの悪循環に陥ると、痛みを引き起こした元々の原因がなくなっても、いつまでも痛みが残ってしまいます。

さらに、痛みによるストレスや不安などの心理的要因が加わると、痛みが慢性化していく傾向にあります。

治癒過程

①感覚的な痛みに対して

痛みを起こす刺激が入らないようにしていきます。

関節の動きをスムーズにしたり、筋肉の柔軟性をつけることにより不快な刺激を入らなくします。

傷に対しては治癒力が働きやすくします。

・体を整えたりして神経の流れや血流を良くします。

・傷にストレスを与えないように使い方の工夫。

②心理的な痛み

患者さんのお話を聞いていると、

「仕事が忙しすぎて仕事中は忘れている」

「自分の好きなことをしているときは痛みを感じてない」

スポーツの場面でも集中して骨折しているにもかかわらずプレイをしているなんてことがありますよね

これがヒントだと思います。

痛みにこだわりすぎないことが大切です。

○○ができるけど痛いと考えるよりも

痛みはあるけど○○できるようになってきたとポジティブにとらえる方は治癒が早いです。

③自律神経

痛みがあり自律神経の働きが過敏になってくると雪だるま式に痛みも増幅されてきます。

特に、ずっと以前からその症状でお困りの方(慢性痛)はその傾向が強いです。

まずは、薄皮をはぐように緊張を緩めて、”大丈夫治る!と感じることからスタートです。

ポジティブに治療に取り組みましょう。

痛みが評価の対象ではない

来院されるほとんどの方の要望を伺うと「この痛みを何とかしてほしい」と言われます。

勿論、その辛い痛みを取り除いてあげたいと強く思います

しかし、痛みは本人だけにしかわからないことなので、痛みだけを身体を評価する指標にするには適しません。

(勿論、参考にはします)

そこで身体の動き(可動性、柔軟性)、筋力、姿勢(歪みやバランス)などを評価の指標として

患者さんと術者がお互いで共有し治療していきます。

治療により、この指標が改善されてくると結果的に痛みやしびれも段々と改善していきます。

痛みの改善の流れは、痛みが100がいきなり0になるというよりも、

段々と軽減していき、痛みを気にする回数が少なくなるというように改善していきます。

まとめ

痛みの役割は痛みを感じることで、身体に警告を促して、

体の使い方に注意を向けるなど身体を守るためにあります。

痛み=感覚的な痛み+心理的要因

また、痛みを感じると交感神経の働きにより痛みの悪循環に陥ることがあるので

傷が浅いうちに早めの治療をお勧めしています。

監修 柔道整復師 小國良成